身近な静電気(1)

プラスチック製の下敷きをこすって頭にかざして髪の毛を逆立てた経験はありませんか?
子供の頃によくやったと思いますが、皆さんは、これが静電気の仕業だということはわかっていると思います。
では、どのような仕組みになっているのでしょう?

その現象は静電誘導によって起こります。

静電誘導とは
マイナスに帯電したプラスチックをある物質(原子)に近づけます。このプラスチックからは電気力線が出ていて物質(原子)の陽子(+)は引き寄せられ電子(-)は遠ざけられます。 この物質(原子)のプラスチックに近い部分が(+)電気を帯び、プラスチックに遠い部分が(-)電気を帯びます。これが静電誘導です。
原因解明
1. 接触・摩擦によって下敷きが(-)に帯電します。
2. (-)に帯電した下敷きが髪の毛に近づいた時、
  静電誘導によって髪の毛の自由電子(-)が反発し(+)の力が強くなり、互いの引き合う力で逆立つのです。

身近な静電気(2)

車のドアを閉めるときバチッ!とくるのは なぜ?

衣服とシートの摩擦によって、衣服とシートが逆極性に帯電します。
体の一部が車体の金属部分に触れるとき体に蓄積された電荷が放電します。


【 静電気による電撃 】
物体あるいは人体に蓄積された電荷が、衝撃的な電流として人体を通るときに発生します。


帯電列

帯電列とは
























綿















































電子を放ちやすいもの、あるいは電子を受取やすいものの序列です。
つまり、異種の物質間で接触・摩擦が行われたとき、上図のように正(+)に帯電しやすいものを左よりにし、
負(-)に帯電しやすいものを右よりにして並べたものです。

例えば、ガラス棒を絹布でこすると、ガラス棒は正(+)に帯電し、絹布は負(-)に帯電します。


帯電列上で近い位置にあるもの同士で接触・摩擦した場合は比較的帯電量が少なく、遠くなると帯電量も大きくなります。
これを応用する事により静電気対策を行う事も可能です。
ただし、物質の表面の粗さや、吸湿性によっては帯電特性が変化が生じる場合がありますので
シビアな環境下では注意が必要です。


参考資料

人体の動作と人体帯電電位

気温20度 相対湿度30%

人体の動作 人体帯電電位(KV)
ナイロンカーペットの上を歩行 2.0 から 2.5
ナイロンカーペットの上ですり足運動 4.5
ソファーから立ち上がる 3.5 から 4.5
アクリルセーターの脱衣 4.5 から 5.0
ポリエステル作業服の脱衣 4.0 から 4.5
アクリル毛布の折り畳み作業 5.0 から 6.0


静電気は人間のちょっとした動作や絶縁物の摩擦により簡単に発生します。

人体帯電と電撃の強さの関係

人体の帯電電位(KV) 電撃の強さ
1.0 全く感じない
2.0 指の外側に感じるが痛まない
2.5 針に刺された感じを受け、ピクリと感じるが痛まない
3.0 針に刺された感じを受け、チクリと痛む
4.0 針で深く刺された感じを受け、指がかすかに痛む
5.0 手のひらから前腕まで痛む
6.0 指が強く痛み、後腕が重く感じる
7.0 指、手のひらに強い痛みとしびれた感じを受ける
8.0 手のひらから前腕までしびれた感じを受ける
9.0 手首が強く痛み、手がしびれた重みを受ける
10.0 手全体に痛みと電気が流れた感じを受ける
11.0 指が強くしびれ、手全体に強い衝撃を感じる
12.0 手全体を強打された感じを受ける


人間は2-3KV以上の帯電レベルにならないと放電を感じません。という事は、
効果的な静電気対策を行っていないIC半導体関連の現場では無意識の内に、
不良の山を作っている場合があるという事です。
恐ろしい…。人間は動く帯電体です。

これで講義は終了です。皆さん静電気の基本についてはもう大丈夫ですね。
効果的な静電気対策の第一歩は静電気の発生源を特定することです。
この講義が皆さんのご参考になれば幸いです。また、ご質問等ございましたらお気軽にお問い合わせ下さい。
長い間お付き合いいただきましてありがとうございました。